第46回大津市写真展覧会(令和5年度)の結果

更新日:2023年07月11日

第46回大津市写真展覧会の結果

第46回大津市写真展覧会の結果を公表します。

会期

令和5年6月24日(土曜)~令和5年6月30日(金曜) 9時~17時
(令和5年6月26日(月曜)は休館日)

会場

大津市歴史博物館 
(〒520-0037大津市御陵町2-2)

出品状況

出品状況表
入選作品数(一般出品作品数) 審査員等作品数 陳列作品数
200点(280点) 10点 210点

会期中の入場者数

延べ927人の方々にご観覧いただきました。ありがとうございました。

審査員

 佐和 賢爾 氏

審査総評

 全体的にレベルの高い展覧会です。「黒が落ちてない」や「白が冴えてない」等のプリントの精度の問題で選外となった作品は皆無でした。被写体とかっきり向き合い細心の注意で練り上げられた作品ばかりで甲乙つけ難く、審査に一苦労でした。最終的に当落を分かったのはタイトルでした。総じて絵柄のレベルの高さに反して即物的なタイトルの作品が多く、「何のためのタイトルか?」と問うてしまう様な場面も多々ありました。タイトルも作者に許された貴重な表現手段の一つです。少しでも自分の作品を良く見せようと思うならタイトルまで真剣に足掻いてこそ展覧会に参加する意義が深まります。我が子に名前をつける様に頭をひねって作品にタイトルをつけてあげてください。そうすればきっと作者の伝えたいことがより直接的に観覧者に伝わり、作品は一人歩きし出すでしょう。また、上手な作品が多かったのも気になるところでした。ここでいう上手というのは、完成はしているがどこかで見た作品というほどの意味です。作品作りに精通することはもちろん良いことですが、ベテランになるほどついつい作品にしやすい被写体ばかりを追いかけ奔走する傾向があります。技術が伴ったなら次は本当に作者が伝えたいこと、それは一見、作品にはならなさそうな被写体かもしれませんが、それでも作品化の努力をしてみるべきです。その先にこそ、オリジナリティという他者には手に入れられない宝物が埋まっています。全体を通じて勿体無いという印象が強く残りました。タイトルのつけ方と作者の視点を大切にする。今後この二つを実行されんことを切に願います。

大津市長賞

第46回大津市写真展覧会 大津市長賞

形式

 カラー単写真

題名

 春をつげる

作者

 吉村 英光

審査評

 比良八講荒れじまい。湖国の人なら誰もが知っている歳時記の一つでしょう。作者はそれを告春の儀式と読みかえました。現代生活を送りながらも伝統文化を敬慕するという一見、背反した精神を共に有する作者の視点がこの作品に結実したと言えましょう。春霞を帯びた曇天の空と舞う願掛けのお札、萌葱を着た導師の迫力のある挙措と神妙に立ち尽くす黒衣の侍僧。二対のコントラストが際立ちながら一枚の作品の上に現われています。空を大きく取り込み、空間を生かしたことで真にダイナミックな絵柄を獲得しています。今風の漁船とブルーシートは現代を表すキーワードとして現実味を帯びさせることに一役かっています。背をすぼめ脇役に徹し切ろうとする船頭さんも儀礼の役割分担における人間模様を想像させ、画面上唯一コミカルな要素として機能しています。タイトルとも相まって見入れば見入るほど発見の多い、味わい深い作品です。

大津市議会議長賞

第46回大津市写真展覧会 大津市議会議長賞

形式

 カラー組写真

題名

 爬行する流体

作者

 西本 明夫

審査評

 タイトルのいわんとすることは換言すれば「水の行方」でしょう。水路や水門などの写真から直ぐに察せられました。持って回ったタイトルをつけたのは、私たちを取り巻くありふれた水の不思議さやありがたさを作者が発見したからではないでしょうか。非常に独創的でオリジナリティの高い表現方法からは作者の哲学的視点が感じられ、一見して舌を巻きました。しかし組み方はどうでしょうか。複数の写真を組み合わせる場合、通常は左から読み解くのを常とします。上下二段二枚なら左上の写真から始まり右上、左下、右下の順に鑑賞するのです。写真は西洋からもたらされたので、横文字と同じように組み写真は左から右に目を走らせるのが習わしです。その場合、せっかく持って回ったタイトルを付けたのに一枚目がいきなり水の写真では即物的すぎてネタバレが早すぎます。ここは左上の水そのものの写真を右下の結論の位置に置き換え、右上の水路の写真から始めるべきだったでしょう。水門の位置はそのままに光と暗闇の写真を右上にレイアウトすれば、まさに「爬行する流体」でオチがつきます。組み方一つで内容が変わります。独特な視点はそのままに、あとは見せ方を研究すれば大化けする作者であることは間違いなしです。

大津市教育委員会教育長賞

第46回大津市写真展覧会 大津市教育委員会教育長賞

形式

 カラー単写真

題名

 修業

作者

 仲野 隆

審査評

 樹齢数百年と思しき深雪をまとった杉木立ちをバックに二人の神職が僅かに掻かれた雪道を踏みしめて進む情景は荘厳さを喚起します。綿帽子を深くかぶった灯篭や石柵も降り止まない雪を想像させ、厳しい雪国の厳寒期をよく表しています。スクエアに構えた画面の中、小径の先には御社があるのでしょうか、中央からオフセットされた神職達の位置どりが不安定で、さらにこの先長く続く雪道を連想させる秀逸な画面構成です。モノクロームの世界で唯一色を纏う衣装も降りしきる雪越しで精彩を欠き、ますます作者の意図通りの作品に仕上がったのではないでしょうか。素晴らしいの一言です。ただ、一点、私は違和感を禁じ得ませんでした。神職たちは烏帽子を被り直裰を着て袴を履いています。つまりこれは礼装です。その服装からは儀式を想像させます。「修業」というタイトルなら本来は白い浄衣が相応しいでしょう。作画的には私の中で大津市長賞と争った作品であるだけに、タイトルの取り扱いに気をつければ順位を上げることが出来たはずで、残念でなりません。作者の今後の活躍に期待します。

大津市文化連盟会長賞

第46回大津市写真展覧会 大津市文化連盟会長賞

形式

 カラー単写真

題名

 安全を守るローカル線

作者

 服部 眞美子

審査評

 画面が小さいながらも不要なものを廃し、見せたいものだけで構成されたよく整った作品です。雪を擁した線路のパターンと雪で一面覆われたホームで画面を二分割し、その境界線上に駅員が振るう赤い雪かき用のスコップが、見るものの目を引きつけます。さらにその先からはブレを伴った雪がかき出され、静と動の対比が見事に写り込んでいます。広くとった画面の中で見るものを一点に集中させる手腕。与えられた状況で過不足なく作品をものにする姿勢は見事の一言につきます。ただし、やはりタイトルには一考が必要ではないでしょうか。「安全を守るローカル線」では話が大きく言い過ぎです。情景を表すなら「吹雪の朝」、駅員に感情移入させるなら「ルーティン」等の絵柄プラスαで止めた方が、散漫さを回避することが出来ます。

滋賀県写真連盟会長賞

第46回大津市写真展覧会 滋賀県写真連盟会長賞

形式

 カラー単写真

題名

 午後の日差し

作者

 植田 善治

審査評

 時折ぶり返す暑さ。残夏というべきか初秋というべきか。その曖昧な季節を、湖面を覆う雲と青い空がよく物語っています。まだ厳しさの残る陽光の中で作者は古びた湖畔の納屋の前で立ち止まります。足を止めたのは建物が珍しかったからではなく、光の在り様が気になったのでしょう。光は射るものを際立たせ、そして影を生み出します。暗く波打つ水面をバックにギラギラと光るトタン屋根、それとは対照的に軒先から下は照度を落とし、吊るされたタマネギや植わった植物などは凝視しなければ判別がつかないほどだったことでしょう。それとは無関係と言わんばかりに揺れるコスモス。現実的な風景を非現実な世界へと一変させる光の力。闇へと続く影と光とのスリリングな関係に対して反応した作者は、はやる気持ちを抑えて夢中でシャッターを切ったことでしょう。日常の中から非日常を見つけだし摘出する技量は流石としか言いようがありません。作者固有の感覚を大事にして作品活動を続ければ、きっと大成する撮り手になるだろうと思いました。

大津写真連盟会長賞

第46回大津市写真展覧会 大津写真連盟会長賞

形式

 カラー単写真

題名

 リラックス・タイム

作者

 吉川 宏暉

審査評

 ふんわりとした空間にゆったり寝そべって画面の外を眺める犬。繋がっているリードもたるんと地を這っています。優しい作者の優しい気持ちが優しい作品を作り上げました。作品を作ってやろうと意気込んでいくら彷徨してもこういった作品は生まれません。常にカメラと在り、流れる水のごとくシャッターを切れる人でなければ、なかなかこの境地には達せないでしょう。日常の中の小さな一編の叙事詩。こんな作品を纏めた写真集を昼下がりのカフェでパラリパラリとめくることができれば、至高のひとときとなることでしょう。シビアな作品が多い中で作者の肩から力の抜けた創作姿勢は出色です。ぜひこのまま優しい作品を沢山作り続けられることを願います。

大津市社会福祉協議会会長賞

第46回大津市写真展覧会 大津市社会福祉協議会会長賞

形式

 カラー組写真

題名

 妖華

作者

 内藤 又一郎

審査評

 作者はかなりのベテランとお見受けしました。花火の写真は数多あれど、光に芯があり質感があることを知っている撮り手は多くありません。質感が出れば火花が持つ本物の色合いは自然と出てきますし、さらに光と光の距離や落ちるスピード、時間までが如実に映像となって現れます。これは経験を積んで知っていなければ出来ないことです。一つ一つの花火を丹念に捉え、作者は組み写真として提示することを選びました。色はもとより、その光のありようがそれぞれ違ったものを並べることでアラカルト的に目を楽しませてくれます。真ん中に一番目立つ白い作品を据え、形の違う青、赤を左右に配置しました。技術、コンセプト共に成功していると言えるでしょう。ただ、惜しむらくは白と赤の花火の形が一見似通っているところです。一枚目から二枚目への色と形の変化に見合うだけの変化が二枚目から三枚目にもあれば、なお素晴らしい作品になったでしょう。

びわ湖大津観光協会会長賞

第46回大津市写真展覧会 びわ湖大津観光協会会長賞

形式

 カラー単写真

題名

 穴窯焼成当番

作者

 藤本 義隆

審査評

 穴窯とは登り窯の直接的な先祖になったとされる大陸由来のもっとも古い形式の窯だそうです。黒を基調とし、その中にかすかに浮かび上がる壁の厳しさ。それに反しキャップにジャンパーというカジュアルな服装の若者がいるかと思いきや、否、そこにはこぼれそうな満面の笑みを浮かべる一人の老人。その笑顔は無邪気ささえ漂わせています。その様々なギャップが見る人を引き込むことでしょう。「この仕事が好きなんや」と、「この仕事こそが生きがいなんや」と老人の語り口まで聞こえてきそうなほどです。この作品は人と生業との幸福な関係、即ち「生きるとは何か?」という永遠のテーマを浮き彫りにしています。内容的には十二分に素晴らしい作品ですが、作画上の難点を言えば顔に比べて手前にある焼き物や老人の左腕あたりのトーンの方が高いことです。これでは、見せたい顔より先に方々に散った白いトーンの方を見る人は否応無しに先に拾ってしまいます。トーンの整理さえすればすっきりとしてコクがある素晴らしい作品に昇華したことでしょう。

準特選

準特選作品一覧表
題名 作者
風雪に耐えて 澤井 重隆
魅せられて 稲田 義雄
散歩道 春山 太郎
孫の忘れもの 野口 季春
棚田の四季 松見 勝郎
晩夏 園田 みちゑ

U-30奨励賞

該当者なし

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