公衆浴場・旅館業施設等におけるレジオネラ症発生防止対策

更新日:2022年09月06日

レジオネラ症は、「レジオネラ属菌」によって引き起こされる感染症であり、国内では入浴施設を発生源とした感染事例が多数報告されており、重篤な場合は死亡者も発生することがあります。
入浴施設では、レジオネラ属菌が繁殖しやすい環境にあることから、利用者の安全を確保するため、日頃から常に衛生管理を徹底する必要があります。

このため、入浴施設を有している施設につきましては、次の事項及びリーフレットの内容をよくご確認の上、レジオネラ症の発生防止対策を徹底いただきますようお願いします。

レジオネラ症とは

レジオネラ症は、重症化傾向の強い「レジオネラ肺炎」とインフルエンザに似た症状の「ポンティアック熱」の2 つに分けられます。

レジオネラ肺炎

潜伏期間は2~10日間。高熱、全身倦怠感、筋肉痛、吐き気、下痢、意識障害等が主な症状であり、症状が重くなれば死に至る可能性があります

ポンティアック熱

潜伏期間は1~2日間。発熱、寒気、頭痛等インフルエンザに似た症状がみられ、一般に軽症のままであり、数日で軽快します。

レジオネラ症の主な罹患者

高齢者、乳幼児、病気にかかっている人等の免疫力が低下している人が感染するリスクが高いです。
なお、人から人への感染は報告されていません

主な罹患患者のイラスト 乳幼児、高齢者、病気の人

レジオネラ属菌とは

  • 土壌や河川、湖沼等自然界に広く生息している常在菌であり、大きさは数ミクロン(μ)です。(1000ミクロン=1ミリメートル)
  • 一般に20~50度で増殖し、36度前後が最も増殖に適した温度であり、一般的に浴槽水やシャワー水の温度がこれに近くなっています。
  • 環境中に常在するレジオネラ属菌がすぐレジオネラ症を引き起こすのではなく、入浴施設等で増殖することにより、レジオネラ症を引き起こすリスクが高くなります。

生物膜とは

  • 浴室の壁面や配管等で発生する「ぬめり」のことです。微生物が作りだした粘液性の物質で形成されており、ぬめりが発生した箇所は細菌等が増えてしまった状態であることを意味します。
  • 入浴施設では水が温かく、入浴者のアカ等により有機物が豊富な場合が多いことから、清掃や消毒等が不十分であるとすぐにぬめりが形成されてしまいます。

注意点!

配管やろ過器の中は、目で見ることも手で触ることもできないので、日頃から注意し洗浄や消毒等を徹底することが必要です!

レジオネラ属菌が生物膜内で増殖する理由

  • 生物膜はその名が示すとおり、表面に膜ができており、この膜が消毒剤等から生物膜の内側にいるレジオネラ属菌を守っています
  • 生物膜内では、レジオネラ属菌はアメーバに寄生することにより、アメーバの体内で増殖を繰り返し、やがてアメーバを破壊して環境中に拡散されます。
生物膜の構造のイラスト アメーバに寄生して増殖するレジオネラのイラストとアメーバとレジオネラ属菌のイラスト イメージ図

アメーバとは、レジオネラ属菌と同様に広く分布する原生生物(真核生物のうち動物・植物・菌類に属さない総称)の一種。主に細菌類を栄養源として捕食する。

レジオネラ症の発生を防止するためには

レジオネラ症発生防止3原則「つけない」「増やさない」「吸い込ませない」を徹底すること!

つけない!

生物膜をつけない

浴槽、配管、循環ろ過器等の洗浄及び消毒を徹底し、レジオネラ属菌繁殖の温床となる生物膜を発生させないようにする。

増やさない!

菌を増やさない

浴槽水の換水及び消毒等を徹底し、レジオネラ属菌を増やさないようにする。

吸い込ませない!

エアロゾルを吸い込ませない

レジオネラ属菌に汚染されたエアロゾル(目に見えないような細かい水滴)を人に吸い込ませないために、エアロゾルが発生しやすいシャワーや打たせ湯等に循環水を利用しないこようにする。

レジオネラ肺炎 人体イラスト

レジオネラ症のエアロゾル感染

レジオネラ属菌が、エアロゾルを発生する設備を汚染することにより感染源が作られ、汚染されたエアロゾルを人が吸い込み、そのエアロゾルが肺胞に到達することで、レジオネラ症が発生します。

施設の衛生管理方法

1.浴槽水等の衛生管理

一般的に浴槽水はレジオネラ属菌が増殖しやすい温度となっているため、消毒等を徹底する必要があります。

管理のポイント

  1. 常時、浴槽水を満杯の状態に維持し、入浴者が利用するその都度浮遊物があふれるようにする。
  2. 浴槽水の換水を毎日行う。ただし、循環ろ過器を使用する場合にあっては、利用状況等に応じて1週間に1回異常換水する。
  3. 換水時浴槽内をブラシでこすり洗いし洗浄後、塩素系薬剤等で浴槽内を消毒する。
  4. 塩素系薬剤で浴槽水の消毒を行い、常時、遊離残留塩素濃度を、1リットルあたり0.4ミリグラム程度に維持する。また、遊離残留塩素濃度は定期的(望ましくは2~3時間毎)に測定し、その測定結果を記録する。
  5. 浴槽水のレジオネラ属菌検査は循環ろ過系統毎に1年に1回以上、気泡を発生させる設備を有する浴槽又は屋外浴槽においては1年に2回以上行い、その検査結果を3年間以上保存する。
    なお、公衆浴場法の許可を受けている施設にあっては、「レジオネラ属菌」だけでなく「濁度」、「全有機炭素(TOC)の量又は過マンガン酸カリウム消費量」及び「大腸菌群」の検査も併せて実施する必要があります。
風呂のイラスト 記録する人のイラスト

2.循環ろ過器等の衛生管理

集毛器及びろ過器の内部は、汚れ等が溜りやすく生物膜が発生しやすいため、特に注意する必要があります!

管理のポイント

  1. 集毛器の清掃・消毒を毎日行い、毛髪、ぬめり等を除去する。
  2. ろ過器の逆洗浄等を1週間に1回(望ましくは1日1回)以上行い、汚れを排出する。また、必要に応じてろ材の交換を行う。
  3. 1週間に1回以上遊離残留塩素濃度1リットルあたり5~10ミリグラム程度に調整した浴槽水等を数時間循環させ、ろ過器全体の内部及び配管中の消毒を行う。
循環ろ過系統図

3.貯湯槽の衛生管理

貯湯槽内で湯水を20℃~50℃で貯留するとレジオネラ属菌が繁殖しやすくなるため、温度管理を徹底する必要があります。

管理のポイント

  1. 貯湯槽内の湯水の温度を、レジオネラ属菌が繁殖しないよう60℃以上に維持する。
  2. 貯湯槽に亀裂や破損箇所がないか、随時点検する。
  3. 貯湯槽内の清掃を1年に1回以上行う。
貯湯槽のイラスト

4.循環配管の衛生管理

通常濃度の遊離残留塩素のみでは、生物膜内のレジオネラ属菌の消毒は不十分であり、配管中の生物膜を除去しレジオネラ属菌を死滅させるため、循環配管の洗浄は定期的(望ましくは1年に1回以上)に行う必要があります。

配管洗浄方法(例)

  1. 過酸化水素による洗浄
    過酸化水素濃度が3%程度になるよう浴槽に過酸化水素剤を投入し、数時間循環させる。
  2. 高濃度塩素による洗浄
    浴槽水の遊離残留塩素濃度を1リットルあたり40~50ミリグラム程度に維持し、数時間循環させる。

注意点

過酸化水素は、「毒物及び劇物取締法」に規定する劇物であり、取扱いには危険が伴います。また、配管洗浄を行うには、設備に関する専門的な知識が必要となるため、配管洗浄は専門業者に依頼して実施してください。

5.その他の衛生管理

シャワーヘッド内部は湯の滞留がおこり、ぬめりができやすく、レジオネラ属菌に汚染される可能性があります。また、気泡発生装置には空気取入口があり、土ぼこりといっしょにレジオネラ属菌を取り込む可能性があるため、いずれも定期的に清掃等を行う必要があります。

管理のポイント

  1. シャワーヘッドの内部を6か月に1回以上点検し、また、1年に1回以上その内部の洗浄等行う。
  2. 気泡発生装置の空気取入口フィルターの清掃・交換を定期的に行う。

日常点検記録

管理日誌に「遊離残留塩素濃度の測定結果」をはじめ、「ろ過器の逆洗浄」、「浴槽水の換水」、「集毛器の清掃・消毒」等についての記録をとり、従業員全員で管理状況を確認することが必要であります
なお、管理日誌は水質検査結果とあわせて3年間以上保管してください。

記録表のイラスト

レジオネラ属菌が検出された場合

水質検査でレジオネラ属菌が検出(100ミリットルあたり10CFU以上)された場合は、速やかに保健所へ連絡し、以下の対応をとる必要があります。
また、施設利用者からレジオネラ症と疑われる患者が発生した場合も、同様に保健所へ連絡してください

レジオネラ属菌検出時の対応フローチャート

  1. レジオネラ属菌が検出された同系統の浴槽の使用停止
  2. 保健所へ連絡
  3. レジオネラ属菌が検出された系統の配管洗浄
    浴槽・浴室の洗浄及び消毒
  4. レジオネラ属菌の再検査を行い、当該浴槽水の安全性を確認
  5. 保健所に改善結果報告書を提出し、当該浴槽の使用を再開
使用不可となったお風呂場のイメージイラスト

その他社会福祉施設の管理について

公衆浴場や旅館の入浴施設だけではなく、社会福祉施設においても浴槽を利用した者がレジオネラ症に感染し、死亡した事例が発生しています。
このため、補助水槽、ろ過器等を有した機械浴についても、「施設の衛生管理方法」を参考にするとともに、以下の管理ポイントのとおり維持管理を徹底する必要があります。

管理のポイント

  1. 使用日毎に浴槽水を換水し、その都度浴槽内の清掃・消毒を行う。
  2. 機械浴のろ過器の多くはカートリッジ式であるため、使用日毎にカートリッジを取り外しその清掃・消毒を行う。
  3. 1週間に1回以上遊離残留塩素濃度1リットルあたり5.0~10.0ミリグラム程度に調整した浴槽水を数時間循環させる。
  4. 補助水槽においても、使用日毎に清掃・消毒を行う。
機会浴槽の構造のイラスト

入浴施設の衛生管理の手引きについて

令和3年度厚生労働科学研究において、「入浴施設の衛生管理の手引き」が作成されました。レジオネラ症対策の一助として御活用ください。

関連リンク

この記事に関する
お問い合わせ先

健康保険部保健所 衛生課 生活衛生係
〒520-0047 大津市浜大津四丁目1番1号 明日都浜大津2階
電話番号:077-522-7372
ファックス番号:077-522-7373
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