第47回大津市写真展覧会(令和6年度)の結果
第47回大津市写真展覧会の結果
第47回大津市写真展覧会の結果を公表します。
会期
令和6年6月29日(土曜)~令和6年7月5日(金曜) 9時~17時
(令和6年7月1日(月曜)は休館日)
会場
大津市歴史博物館
(〒520-0037大津市御陵町2-2)
出品状況
入選作品数(一般出品作品数) | 審査員等作品数 | 陳列作品数 |
---|---|---|
168点(237点) | 9点 | 177点 |
会期中の入場者数
延べ1,073人の方々にご観覧いただきました。ありがとうございました。
審査員
佐和 賢爾 氏
審査総評
昨年に引き続き全体的にレベルの高いコンテストになりました。ベテラン勢が多く、いかにも撮り慣れ、伸ばし慣れていて表現の勘所を押さえている作品が多い印象でした。その反面、作品になりやすい被写体が多く選好されていて、いわゆる月並みで新鮮味の無い作品が目立ったのも事実でした。
長く写真を撮っていると、過去の経験から、特定の被写体に対するアプローチの仕方が画一化され、最小限の労力でそこそこの作品を量産することができるようになります。そのような作品は上手いけど、何処かで見た秀作といったところで、経験と技術を持ち合わせているベテランが片手間で、予定調和で撮った産物という印象から免れ得ません。撮り慣れている被写体に対する時、人が行かない時間に撮影してみたり、超ローアングルやハイアングルで見方を変えて見たり、思い切って今まで使ったことのないレンズ一本で臨むなどの荒療治が必要になります。
さらに付け加えると他人が撮影するものは、自分は撮らないくらいの意気込みが表現者には必要です。写真は絵画のタッチや書の筆跡のようにオリジナリティを主張する技に乏しい分野です。カメラも紙も工業製品でできていて、皆が同じ製品を使って表現するからです。
自分だけの被写体、自分だけの撮り方、自分だけの見せ方、自分、自分、自分……。それを貫いた先に初めてオリジナリティが芳香を放ち輝き出すのです。
表現とは、自分を探し自分を見つけ唯一無二の作品をものにすることが目標となりましょう。今回のコンテストでは上手く作品づくりできているのに選外になった作品も多くありました。それはオリジナリティ不在との理由で選外とさせていただきました。
昨年お話しさせていただいた題名の件につきましては全体的に大きく改善され、内容をよく表しているものや、絵柄のヒントとして題名を使っているもの、題名から考えたであろう絵柄も散見されました。題名を斟酌し、自分を十全に表現する作品を皆さんがこれからも撮っていかれることを切に願っております。
大津市長賞

形式
組写真
題名
球形の風影
作者
春山 太郎
審査評
一見した時に「やっと出てきたか」という感想を抱きました。
被写体はステンレスパネルタンクというそうですが、これは地方の国道などを走っていると、突如としてよく現れます。形が面白く周りの景色や光がよく映り込むのでこれを被写体とした人はかなり多いのではないでしょうか。私も御多分に洩れず、夕日の反射や夜に自動車のテールランプを写しこんだりして何度か作品化を試みましたが芳しい結果は得られませんでした。それを作者の春山さんは真正面から一枚一枚のパネルの球形の中に世界を発見されました。茫洋として抽象化された風景は、まるでまだ目が利かない赤子が見た世界のようにも見えます。それを三枚組み合わせ、中に映った風景の差異によって見応えのある風影を現出して見せました。また、平面の部分はあくまでがっちりと映っていて円形に映し出された朦朧とした世界との間に境界があるのも、現実と虚世界の間を作品を見る人が行き来できるように計らったのでしょうか。非常に素晴らしい構成になっています。
ただ、惜しむらくは真ん中に一番明るくコントラストが高い作品を持ってきたことです。一番左が明るくて右に行くに従って暗くなる、もしくはその逆などの構成をすれば昼から夕方、夜明けから早朝などの時間の要素をも取り入れた表現になったことでしょう。ともあれ、あまたのカメラマンが作品化出来なかった被写体をものにしたことには感服しました。文句なしの大津市長賞受賞作品です。
大津市議会議長賞

形式
単写真
題名
朝拝へ向う
作者
仲野 隆
審査評
紅葉と鳥居をバックに斜光線の中、若い巫女さんたちの出勤風景でしょうか。朝の清々しく澄んだ空気とバックに繁茂する社の杜の重厚さを意識して構図を取り、その中に人物が全く適切な大きさと人数で心憎いばかりに構成されています。
また、人物をよく見ると三人ともマスクをしておりコロナ以降の近作であることも伺えます。中央の人物が手にした紙様の物を両脇の人物が注目して視線が交差していることや、また持ち物がスヌーピーだったり、今風のカバンだったりして、巫女さんたちが現代っ子であることや、さらには足の動作がそれぞれ違うこと、見れば見るほど三人が三様であり関係性を読み解く楽しさに溢れた作品に仕上がっています。これぞスナップ、まさにスナップという秀作だと思います。
ただ、一点気になったのはこの作品を狙って撮ったのなら紅葉の時期を選んだことに疑問を感じました。紅葉に巫女さんの赤い袴は色が打ち消しあって人物の存在感が希薄になってしまいます。これが新緑の中だったらもっと赤い袴がものを言って三人を浮き立たせたことでしょう。その時は後ろの少し覗く鳥居の赤も効いてきます。もし全てを赤で押し切りたいのなら『赤い風の中で……』や『紅い季節』などの題名の方がよかったかもしれません。
大津市教育委員会教育長賞

形式
単写真
題名
不安と期待
作者
岸 洋子
審査評
まさに混迷を深める世界情勢を鑑み問題意識を持って作画した意欲作です。
我が国は八十年ほどの間、戦争をせずに乗り切れましたがこれは世界的に見るとかなり稀有な部類に入ります。前世紀は戦争の世紀と言われるほど人類が争った時代でした。それが今世紀になってまでまだ続くのかと頭を抱えた人も多くいることでしょう。もちろん地球のどこかで行われている戦争は私たちにとっても無関係でいられません。戦場から遠く離れた地から人々の苦しみを思うだけでも苦しいのに、それは経済に影響を与え我々の苦しみをも呼び覚まします。
作者は黒土地帯で育つジャガイモに焦点を当て、古くなってもう食べられなくなったことで戦争の悲惨さや不安を表現し、新しく出る芽にこれからの平和な世界を託し、期待をもって見つめ直しました。
さらに直接的表現として新聞をあしらって、日本との関わりと死にゆく者と生まれ来るものの関係性と対比を作画したのは見事としか言いようがありません。ただ、バックとして機能する新聞がいかにも読んでくださいとばかりに真正面で真っ直ぐなのは少し押し付けがましいかもしれません。ここは一度新聞紙でジャガイモを包み、それを解いて斜めに構成し直して撮影したほうが、偶然、悲惨な内容の新聞紙の中で歴史の変遷を喚起するジャガイモが胎動していたという風に見せられてさらに効果的だったと思います。
大津市文化連盟会長賞

形式
単写真
題名
風の宅急便
作者
林 節子
審査評
カラフルで清々しく気持ちの良い作品です。人為的なしつらえをされたイベント会場ではついつい撮らされてしまい、オブジェを作った作家の作品集になってしまうことが通例ですが、この作品は風を題材にしたことと、タイトルの付け方で大いに内容を深化させて見せました。
奥に見える自撮りをしている男女は背景の山々や湖をバックに清々しく仲睦まじい自分たちを風に託して誰に届けようとしているのでしょうか?病床に臥せっている親族かもしれませんし、外国にいるお世話になった上司かもしれません。手前のクロスで風を表現し、実はその奥の点景の人物が主役という非常に穿った構成ですが作画的にも成功しています。誰もが撮る場所で自分なりの視点で作品を作り上げる力量は確かなものだと感心しました。
滋賀県写真連盟会長賞

形式
単写真
題名
目ヂカラ
作者
荻野 利子
審査評
最近はこの手のポスターやショーウインドウを作画に使うことは知的財産権や肖像権の観点からコンテストでは非常に厳しい取締の対象になってきています。しかし、この作品はまるまるポスターを使うのではなく前を通り過ぎる人々を配置することで日常の中での一瞬の邂逅を見事に捉えました。
タイトルも目力とするのではなくヂカラとすることで大正ロマン風のエキセントリックさを感じさせます。これは企業のディレクターが狙ったコマーシャルとは全く違う効果を創出したことでしょう。前を行く人々のブレ方も適切で静と動の対比も秀逸です。最近は街の中でカメラを振り回しづらい時代になってきていますが、作者にはこれからも街の遊撃手としての活動を期待したいと思います。
大津写真連盟会長賞

形式
単写真
題名
祭日
作者
藤堂 裕子
審査評
これぞコンテスト写真と言わんばかりのおあつらえ向きの状況です。上下二段に人物を配し、人物が重ならず、またそれぞれの関係性や仕草などが違うことはスナップ写真のお手本のようで圧巻です。
ただ、残念なのは構図的に画面の上部三分の一が意味をなしていないことです。二階の障子の上辺あたりでカットすれば画面が間延びすることもなかったでしょう。それと全体的に彩度が高く、特に人物の顔が肌色を通り越して朱色に近く描写されていることも減点の対象になりました。その二点さえ改善されていればもっと上位で入賞した作品でした。誠に惜しいと言っておきます。
大津市社会福祉協議会会長賞

形式
単写真
題名
晴れの日
作者
本田 昭夫
審査評
歳時記ものは一度の撮影で満足のいく作品ができることは非常に稀です。その意味で作者は何度もこの祭りに足繁く通ったとお見受けしました。内容的にもタイトル通りまさに『晴れの日』で神道のハレをも含蓄していてなかなかに見応えのある作品に仕上がっています。祭りの写真は常に足場の規制をどうするかの戦いになりがちですが、この作品は真正面から細大漏らさず祭りの賑々しさや男親のはしゃぎようや子供達の疲れた表情を浮き彫りにして正に記録作品としての風格を持っています。このような作品は今よりも10年後、20年後、50年後にこそ、その真価を発揮するでしょう。写真の大きな特性の一つが記録だと今更ながらに教えられる秀作だと思います。
びわ湖大津観光協会会長賞

形式
組写真
題名
冬深む
作者
松見 勝郎
審査評
素晴らしいモノクロの階調によって表現された組み写真です。雪が降っている情景、手前のトーンが低く、遠ざかるほどに高くなって行く過渡特性。黒場をしっかり作ることによって雪の柔らかさ、白さを表現する手法は存分に暗室を経験された方だとお見受けします。冬の里の深まる雪景色をモチーフを変え丹念に一枚一枚仕上げたのは、成功していると思います。
しかし、四枚組のうち左右の写真が絵柄的に似通ってしまったのは残念でした。山の斜面の向きも同じなのもさらに拍車をかけました。右端の作品を一枚外して家を真ん中に納め、左は四枚目の川の写真、右側は杉木立ちの写真でまとめると家を挟んで両脇から山の斜面が垂れ下がり、山間のひっそりした人々の暮らしを想像させる作品に昇華したことでしょう。四枚組ならもう一つ違うモチーフを同じような距離感で入れるべきでした。仕上げが素晴らしいだけに残念至極。組み方が改善されればもっと上位に食い込める作品になったことでしょう。
準特選
題名 | 作者 |
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寒い朝 | 藤本 義隆 |
奉火 | 上田 薫 |
靴守りと赫い壁 | 西本 明夫 |
日暮変化 | 福島 正則 |
熱さの中 | 久木 康裕 |
U-30奨励賞
該当者なし
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更新日:2024年07月09日