大津市文化特別賞 久末航さんインタビュー

更新日:2025年12月11日

久末航さん

久末航さん大津市長と

大津市長と記念撮影の久末航さん

 令和7年度大津市文化特別賞を受賞された、ピアニストで大津市出身の久末航さんにインタビューしました。

 久末航さんは、2025年に世界三大ピアノコンクールの一つである、エリザベート王妃国際音楽コンクール(ベルギー)ピアノ部門で、日本人歴代最高位の第2位に入賞されています。

インタビュー

大津からドイツへ

子どもの頃は

 小中高と公立学校を出た普通の子どもでした。両親とも音楽関係の仕事ではありませんが、音楽好きではありました。5歳の時に自分から習いたいと言い出したことがピアノを始めたきっかけです。大学受験では理学部を志望していました。

ミショリ先生との出会い

 中学1年生の時にドイツ・フライブルクからピアニストのギレアド・ミショリ先生が来日し、公開レッスンを受けました。先生とはほぼそのとき限りだったのですが、6年後の高校を卒業するタイミングで先生から直接電話が入り、フライブルク音楽大学への進学を勧められました。

 そのお誘いがまさしく一生を左右しました。そのタイミングでなければ、お誘いを受けていたかどうかわからないですね。そうして、高校卒業後の秋にドイツのフライブルクへの留学に旅立ったのです。

ベルリンへ

 フライブルクでの留学を終えた後、師事する先生を求めてベルリンへ移りました。ベルリンでは、フランス人のパスカル・ドヴァイヨン先生、ドイツ人のクラウス・ヘルヴィヒ先生に教えを受けました。

 ベルリンは音楽ばかりでなく、美術・バレエ・オペラ・テクノシーンなど、あらゆる文化の要素がダイナミックに集まって、充実した環境の街です。休日には近くの湖で泳いだりボート遊びなどもできますし、散歩するにも適度に自然があふれています。心身リフレッシュも大切な要素ですから、日頃のトレーニングやボルダリングも楽しんでいます。

世界三大ピアノコンクールで2位に

演奏する久末航さん

演奏中の久末航さん

コンクールのこと

 エリザベート王妃国際音楽コンクールの本選では最後にブラームスのピアノ協奏曲第2番を演奏しました。そのときに一番自分にふさわしい曲として選びました。50分もかかる重厚な曲で技術的にも難しい曲です。

 決してピアノが常に前面に出る曲でもなく、派手に響く曲でもないので、内面を重視するというか内省的で、深みを表現できる協奏曲ですね。ベルリン滞在も7年から8年となっていたので、そういう落ち着いたところも集大成として出せるのにふさわしい曲だと思いました。20代の若い子たちもコンクールに出場し、激しく鳴らす場面もあったりします。そういうのも一つの魅力ですが、そのとき30歳の自分としては落ち着いた表現を目指しました。

 ブラームスのピアノ協奏曲は、協奏曲というよりはピアノ付交響曲と言われるような、オーケストラとピアノが対等に重要な曲なのですが、自分がこれまで室内楽で得られた経験を存分に活かせられるだろうという想いもありました。

コンクールの指揮者

 協奏曲の指揮者は大野和士さんでした。同じ日本人同士ということもありますが、それ以前にも日本で共演したことがあるので、とてもやりやすかったです。ベルギーのコンクールで再び共演できたことは、何か不思議な縁を感じています。と言ってもコンクールの指揮者といちコンテルタットですから、親しくする訳にはいきません。言葉を掛けたりではなく、音楽で通じ合いサポートしてもらうような安心感を感じることができました。

これからのこと

コンクールから演奏活動へ

 今年8月に31歳になって、コンクールは卒業しコンサート活動に専念するつもりです。

 リサイタルで曲順を考えるときは、演奏会のテーマを設けて、たとえばドイツ音楽であればドイツ人作曲家を軸にして選曲していきます。そこに少しフランス音楽を加えて変化を付けるようなこともあります。そういう組み合わせ次第でも、様々なメッセージ性が込められるのだと思います。

隠れた名曲も

 2024年のバロックザール青山音楽賞を頂いたリサイタルでは、バルトークの「3つのブルレスク」を演奏しましたが、こういった隠れた名曲もたくさんあります。今秋にはドイツで、現代作曲家のパスカル・デュサパン作品集をリリースしました。現代作曲家の作品も積極的に紹介していきたいですね。

若い人や子どもたちに

久末航氏_市長との面談

大津市長と面談される久末航さん

幅広く興味をもつ

 若い人や子どもたちには、音楽に興味を持ってほしいです。しかし、自分も普通の高校生でしたが、一転してピアノの道に進むため海外に行きました。海外ではいろいろな音楽以外の経験も生きているし、周りの理解やサポートが大事だったとも思います。だから、いろいろなことに興味をもってやりたいことにチャレンジしてほしいですし、周りの大人もそれを見守ってほしいです。

世界への挑戦

 今は海外へも気軽に行ける時代になりました。同世代でも、音楽に限らずスポーツをはじめ、様々な分野で活躍している日本人がたくさん登場されています。これからの若い人たち、子どもたちも、日本に留まらず積極的に世界へ視野を広げて、挑戦していってほしいです。

 

久末航さん プロフィール

 5歳でピアノを始め、小学生の頃から才能を発揮し、数々の賞を獲得。滋賀県立膳所高等学校卒業後、ドイツ・フライブルク音楽大学、パリ国立高等音楽院留学を経て、ベルリン芸術大学の修士課程を最優秀の成績で修了。平成29年、第66回ミュンヘン国際音楽コンクールピアノ部門で3位入賞。同年大津市文化奨励賞。

 令和7年5月、世界三大ピアノコンクールの一つ、エリザベート王妃国際音楽コンクールピアノ部門で日本人歴代最高位・第2位の快挙達成。

 現在はドイツ・ベルリンを拠点としてドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、韓国等で幅広く演奏活動を展開中。

大津市文化賞等受賞者一覧

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